一生履きたい大人の一足

vol.04

革靴のデコボコしたクレーター状の
銀浮き(水膨れ)を補修する方法

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ある日、靴職人のもとに1本の電話がかかってきました。話を聞くと、革靴が濡れて銀浮き(水膨れ)と呼ばれるクレーター状のデコボコが発生した模様。慌てることなく緊急ケアを提案しましたが、その方法とは?

銀浮き(水膨れ)が発生した革靴

D氏職人さん、大変です! 私の革靴が濡れて、デコボコした水膨れみたいなクレーターが出てきてしまいました!

職人Dさん、ひとまず落ち着いてください。雨の日に履いてしまったのですね。

D氏天気予報では雨が降らないはずだったので、安心していたのですが、突然の通り雨で革靴が濡れてしまいました。でも、そのままにはしておけないと思って、そのとき持っていたアルコールティッシュで拭いたんです……。

職人アルコールで拭いてしまったんですね。緊急を要するので、革靴のデコボコしている箇所を優先的に直していきましょう。

D氏どうずればいいんですか?

職人ご自宅にキッチンペーパー、もしくはティッシュペーパーはありますか? それと、洗面器に少量の水を張ってください。

D氏ティッシュペーパーと洗面器を用意しました!

職人それではまず、ティッシュペーパーに水を含ませてください。それを軽く絞っていただいて、革靴のデコボコした箇所に湿布を貼るように置いてください。

D氏ちょっと待ってください。水で濡れた革靴の上に濡らしたティッシュペーパーを載せるなんて、逆効果じゃないですか?

職人大丈夫です。私を信じてください。水で発生した症状は、水で解決することができます。現状は革の表面だけに水が浮いているだけで、実は見た目ほど革の内部には水分が含まれていないんです。デコボコした箇所を紙やすりなどで削るのは、絶対にNGなのでやめてくださいね。

D氏分かりました。職人さんを信じます。

濡らしたティッシュペーパーを貼った革靴

職人貼り終わったら、それを3〜5時間ほど放置してください。

D氏そんなにですか? カビが生えてきたりしませんか?

職人問題ありません。ご心配であれば、1〜2時間おきに様子を見てください。デコボコがなくなってきたら、ティッシュペーパーを取って乾いたタオルで軽く押すように拭いてください。

D氏革の表面がだいぶ落ち着いてきたので、ティッシュペーパーを外して拭きますね。

職人ここからが重要です。そのまま自然乾燥させると、シミができてしまう場合もあるので、なるべく短時間で乾かします。ドライヤーを用意していただいて、革靴から約30cm離れた位置で温風と冷風を交互に当ててください。大体5分程度繰り返していただければ、後は自然乾燥で大丈夫です。

ドライヤーで乾かした革靴

D氏温風と冷風を交互に当てるのがポイントなんですね。はい、乾きました。

職人乾いたら、今日はそのままシューキーパーを入れて、玄関などの日陰に置いてください。明日、革靴が完全に乾いていたら、以前私が教えた靴磨きのケアを行ってください。

Dさんの革靴は、タンニンなめしというなめし方で作られていますが、高価な靴ほど雨などの外部からの要因に弱い傾向があります。それは、動物の皮膚を加工するとき、革の風合いを出すために強い成分を使いたくないからです。ただ、その分、靴を保護する力が弱くなります。今回は緊急ケアでなんとかなりましたが、もし靴の状態が改善されないようでしたら、遠慮なく店舗にお持ちください。私たち職人が、責任を持って修理いたします。

D氏お陰様で、すっかり元の状態に戻りました! 今回も色々と教えていただき、ありがとうございます!

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