一生履きたい大人の一足

vol.08

大切な靴の擦り減り・摩耗を防ぐ
ハーフソールとビンテージスチール

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D氏この靴も購入してからそろそろ一年が経ちますので、定期的なメンテナンスをお願いしたいのですが。

職人かしこまりました。それでは、ちょっと拝見しますね。あれ? つま先が異常に擦り減っていますよ。

擦り減った靴のつま先

D氏この靴はノーズが長いので、階段などに当たって擦り減ったのかもしれません。

職人靴の形もあると思いますが、Dさんの歩き方の癖として、つま先から地面に着地しているのかもしれませんね。一般的には、かかとから擦り減る人が多いので、珍しいケースです。

D氏自分では気が付かなかったんですが、歩き方に癖があったんですね……。

職人でも、今気付いて良かったですよ。このままつま先の摩耗が進んでしまったら、ウェルト(糸)まで到達してしまうところでした。

D氏ウェルトまで到達してしまったら、どうなるんですか?

職人修理が難しくなります。ウェルト交換は修理の工程も複雑なため、費用も高額になります。両足で3万円以上かかることもあります。

D氏そんなにかかるんですか! 靴の修理にちょっとその金額は出せないですよ。

職人ですので、今気付いて良かったと思います。大切にしている靴は、定期的なメンテナンスが必要不可欠です。それが、結果として出費を抑えることにも繋がりますので。

D氏僕もそう思います。今の段階でこの靴に必要な修理はなんですか?

職人ハーフソール交換とビンテージスチールの取り付けをオススメします。もちろん、ビンテージスチールだけを取り付けることもできますが、つま先の摩耗を防げても周りが減ってしまうデメリットがありますので、ハーフソールと併用していただくことを私は勧めています。この組み合わせは、大切な靴を摩耗から防ぐための最強の方法なんです。

D氏ハーフソールは、以前貼っていただいたので分かります。靴底の半分に薄いゴムを貼り付けて、擦り減りを防ぐものですよね。

職人そうです。擦り減り防止以外にも、滑り止めや足への負担軽減といった効果があります。雨で濡れた地面は滑りやすいので、梅雨や秋雨の時期には特にオススメしています。この靴のハーフソールも消耗してきていますので、そろそろ交換が必要なタイミングですね。

ハーフソール交換のBefore/After

D氏ハーフソールは、どれくらいの頻度で交換するのがいいですか?

職人目安としては、日常的に履く靴であれば1年に2回くらい、たまに履く程度であっても1年に1回は貼り替えをオススメしています。ハーフソールはゴムが多いので、古くなるほど固くなります。なるべく新しいものを使用していただいた方が、履き心地も維持できます。

D氏なるほど。以前はお任せで貼っていただきましたが、ハーフソールにもいくつか種類はあるんですか?

職人はい。今貼られているのが、「アルペ」と言われるどんな靴にも合うソールです。靴底のロゴを邪魔せず、機能性も優れているソールですね。他にも、雨の日に強いもの、歩行学に合わせた柄が入っているもの、硬質な素材でできているもの等、多種多様な取り扱いがございます。今回オススメしたいのは「エクスプロージョン」というソールですね。溝の形が雨に強く、グリップ力があり、歩きやすさも考えて作られています。

D氏では「エクスプロージョン」でお願いします。ビンテージスチールについても訊いていいですか?

職人もちろんです。ビンテージスチールとは、靴底のつま先部分に埋め込む金具のことで、つま先部分が減るのを極力なくす修理になります。日本ではまだまだ馴染みがないかと思いますが、ヨーロッパ・米国ではポピュラーな修理方法なんですよ。

ビンテージスチールの取り付け

D氏靴に金属を貼り付けると、雨の日は滑りやすくなるんじゃないですか?

職人つま先に付ける小さな金属ですので、滑りやすくなることはまずありません。ただ、付けられる靴と付けられない靴があります。ゴム底の靴や過度に四角いつま先の靴には付けることができません。また、硬い路面を歩くときは多少音が鳴ることがあります。でも、昔と比べて素材も進化していますので、あまり気にされることもないかと思います。

D氏そうなんですね。ビンテージスチールの取り付けもお願いします。いくつか種類はあるのですか?

職人大きく分けて2種類ありまして、ビンテージスチールはどちらかといえばフォーマル寄りの靴に使われます。もうひとつ、トライアンフという真鍮でできているタイプがあります。こちらは、ワークブーツやカジュアル寄りの靴に多く使われています。Dさんのはフォーマルな靴ですので、ビンテージスチールが良いと思います。

D氏分かりました。それにしても、靴を買ったときには知らなかった、履いてみないと分からないことってたくさんあるんですね。

職人私も本当にそう思います。歩き方も靴の種類も千差万別ですので、履いてみて初めて様々な悩みに直面するものです。お客様の大切な靴を長く愛用していただくためにも、困ったことがあったら、私たち靴職人にぜひご相談ください。

ハーフソール交換とビンテージスチールの取り付けが完了した革靴

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