「もし修理ができるのなら、ぜひお願いしたいんです」
少し思い詰めた顔でご来店されたお客様の第一声には、ただならぬ気持ちがこもっていました。
30年前に亡くなった母が使っていた、本物のクロコダイル革のハンドバッグ。持ち手が切れ、革自体も乾燥して、このままじゃ崩れてしまう可能性がありました。修理をしたいけど、どこに持って行っても断られてしまう……。諦めかけて、最後に辿り着いたのが、靴専科でした。
靴専科では、他店で断られた思い出の靴やバッグを、熟練の職人がプロのノウハウと経験のすべてを駆使して修理・クリーニングいたします。お客様のご希望に沿ったリメイク修理も可能です。
年季の入ったクロコダイル革のバッグの良さを残しつつ、新しく生まれ変わっていく様子をご紹介いたします。
目次
サービス手順
①ご要望のヒアリング、最終デザインの決定
②分解したパーツの劣化具合の確認、全体的な大きさ等の決定
③パーツ毎の分解、劣化に応じた補強
④使いやすいように口元をマグホック留めに変更
⑤組み立て、完成
①ご要望のヒアリング、デザインの決定
バッグに経年劣化がある場合は、事前に入念な打ち合わせをさせていただいてから修理いたします。お客様にご希望をお伺いすると、「エレガントな仕上りで、使えるようになれば……」とのことでした。
問題なく使えるようにクロコダイル革本来の良さを活かしつつ、補強していきましょうとお伝えし、下記バッグのような形であれば問題なく修理可能ですと、写真を見てもらいながらご提案させていただきました。
【ご提案のポイント】
クロコダイル等の爬虫類の革は、素材の良さを活かすと同時に、イメージがしやすいように元のバッグに近い形状のもので説明いたします。
②分解したパーツの劣化具合の確認、全体的な大きさ等の決定
金具にキズが付かないように外していきます。その際、無理な力を加えて革をキズ付けないように細心の注意を払います。また、分解するまでは分からなかったパーツの劣化具合や構造の確認も併せて行います。
今回は大丈夫でしたが、金具の下の革が劣化していた場合、交換もしくはサイズ調整などに変更する場合もあります。
③パーツ毎の分解、劣化に応じた補強
革が乾燥してボロボロと崩れないように補強しながらパーツを分解していきます。一つひとつパーツの状態によって、修理の順番や工程を考えていきます。このときに最終デザインを決めて、それに合った糸や素材も選定していきます。
※今回はクロコダイル革の表面がキレイに残っているので、フチは狭い巻革仕様(バインダー)に変更いたしました。
④使いやすいように口元をマグホック留めに変更
開口部分が口金(がま口)の場合は本体への負担も大きいので、開閉しやすく違和感の無い色味のマグネットホックに変更いたしました。
内袋も劣化が激しかったので、生地も併せて交換しています。開口部分は大幅に補強され、普段使いの頻度にも耐えられる強度になっています。
⑤組み立て、完成
持ち手を新規で制作し、本体には丈夫にするために革を巻いて完成です。
修理が終わり、お客様へバッグをお返しすると、心から喜んでいただけました。去り際に感謝の言葉とともに仰った一言が忘れられません。
「諦めないで、良かった」
靴専科は、長年にわたって蓄積した技術力と臨機応変な対応で、「断らないを基本に最大限応える」姿勢で修理・クリーニングを行っています。
月間50,000件以上のバッグや靴が持ち込まれますが、その一つひとつには、お客様の想いが込められています。
「大切な人にプレゼントされたものだから」「一生大事に使いたいから」
新品のようなものが欲しければ、新しく買った方が早い場合もあります。それでも、修理して使い続けたい人がいます。
バッグや靴の修理を諦める前にぜひ一度、お近くの靴専科までお問い合わせください。